ソフト闇金カリカリ君

ソフト闇金カリカリ君|土日祝日も対応
「カリカリしてんじゃねーよ」
今日も世のため人のためにお金を貸すのであった。
朝九時。古びた雑居ビルの一室にある「カリカリ金融」のシャッターが、ガラガラと音を立てて開いた。
金庫、そろばん、年代物の電話。壁には「返せないときほど早めに相談」と書かれた紙が貼られている。カリカリ君は湯気の立つお茶をすすりながら、今日も相談者を待っていた。
最初に現れたのは、作業着姿の青年だった。
「母ちゃんが入院して、急にお金が必要になったんです。でも給料日は来週で……」
青年は帽子を握りしめ、申し訳なさそうにうつむいた。
「それで朝から、ずっとそんな顔してんのか?」
「はい……」
カリカリ君は机をバンと叩いた。
「カリカリしてんじゃねーよ!」
青年は驚いて顔を上げた。
「困ったときに困った顔をするのは当たり前だ。だがな、事情も聞かずに金だけ渡すほど、俺は無責任じゃねえ。必要な金額と返せる予定を、一緒に整理するぞ」
カリカリ君は家賃、生活費、給料日までの日数を丁寧に確認した。貸せるだけ貸すのではなく、本当に必要な金額だけを計算する。それが彼なりの流儀だった。
昼過ぎには、小さな弁当屋を営む夫婦が訪れた。冷蔵庫が故障し、修理代が足りないという。
「店を閉めるしかないかもしれません」
「まだ昼だろ。閉店を決めるには早すぎる」
カリカリ君は修理業者へ電話をかけ、支払日の相談まで始めた。結局、夫婦が借りる金額は最初の予定より少なく済んだ。
「貸す金が減ってしまいましたね」
夫婦が心配そうに言うと、カリカリ君は鼻で笑った。
「必要のない金まで貸してどうすんだ。俺が増やしたいのは借金じゃねえ。明日も開く店だ」
夕方、カリカリ君がシャッターを閉めようとすると、朝の青年が戻ってきた。手には小さな紙袋がある。
「母の入院手続きが無事に終わりました。これ、病院の近くで買ったまんじゅうです」
「礼なんかいらねえよ」
そう言いながらも、カリカリ君は紙袋を大事そうに受け取った。
夜の商店街では、弁当屋の明かりがいつもどおり灯っていた。店先に立つ夫婦が、遠くから深く頭を下げる。
カリカリ君は照れくさそうに顔をそらし、ひとりつぶやいた。
「まったく、どいつもこいつもカリカリしすぎなんだよ」
世の中から金の悩みが消えることはない。それでも、目の前の誰かが明日へ進むための少しの力なら貸すことができる。
古びた鞄を肩に掛け、カリカリ君は夜の街を歩いていく。
明日もまた、誰かのために金を貸すのであった。




